「障害者自立支援法」に基づく施策実施にあたっての緊急要請書に対する市町村の回答について

2006年2月13日

障害児者の生活と権利を守る神奈川県連絡協議会

 

私たちは12月に全市町村に緊急要請書(別紙)を送り、今月20日までに文書回答を求めました。現在までに、未回答のところは、津久井、相模湖、愛川、中井、大井,開成、清川の7町村です。

 30の自治体から届いた回答のほとんどが、国から省令がまだ出されていないという理由で、「国からの情報を待って対応したい」という回答が目立ちました。また、4月から実施する短期間の準備のため、市としての制度運用を考える余地もなく、「国の方針通りとする」と回答した市町村も少なくありませんでした。さらに、国が説明する内容を書いて,

私たちに理解をお願いしたいと回答してきたところもありました。

 そういうわけで、ここでは、要望項目のうち重要だと思われる事項の説明と、それに対する回答の特徴点を報告します。

 

 まず、制度の周知徹底ですが、いま市町村では利用者負担上限額設定のための所得区分認定の申請が始まっています。それだけに現行サービスの利用者はもちろん、障害者全体に制度全般、とりわけ負担軽減の説明を行ない、利用者が納得した上で申請を働きかけること、また個別の相談を受ける体制が求められています。

ほとんどの市町村で説明会がもたれていますが、しかし例えば、小田原市では利用者全員に対して預貯金のコピーを出させ、資産の申告を迫るような通知を出したり、相模原市では課税状況を調べるための同意書を十分な説明も無く求める申請書が送られてきたりなど、市町村ごとに対応がまちまちで障害者と家族に混乱を招いています。

 これに対して、大和市では市内全体で6回説明会をもってその時に申請書を渡すなどの対応をしています。この申請は、最低、現行サービス利用者がもれなく申請することが大事ですので、懇談の中では、もれがないかどうかを確認し、もし、漏れがあるならば具体的な対応を求めていきましょう。

 

次に利用者負担の問題ですが、国は負担上限額と個別減免など負担軽減策を盛り込みました。しかし、課税世帯にはいっさいの軽減が無く、個別減免などにいたっても多くの制限が負荷されているなど負担軽減とは呼べず、いくら上限が設定されても応益負担である限り、障害が重い人ほど負担が重くなることには変わりません。負担が大変なので施設に通うのをやめてしまうとの実態も報告されています。

こうした状況に市町村がどのように対応するかがいちばん問われています。私たちは応益負担に一貫して反対してきました。その立場に立って、一時的な軽減ではなく、負担なしの措置も含んだ減免制度の創設を求めていきたいと思います。

その点、横浜市は低所得者の利用料を免除する減免制度の実施を発表しました。川崎市では予算編成の中で減免制度を検討すると回答してきました。また、座間市でも低所得者に対する一部減免を考えているとの回答が寄せられました。

しかし、県をはじめ、その他は「独自の措置は行なわない」、あるいは「実施状況を見て判断する」と回答してきました。減免を実施するところと、実施しないところとの格差が広がります。議会にも働きかけて減免制度の実現を粘り強く求めていきましょう。

自立支援医療の医師診断書については、「助成は困難」「自己負担になる」がほとんどでした。12月の横浜市議会において「医師の診断書等無償交付に関する意見書」が決議されました。これを縦に、無償交付を要求していきましょう。

知的障害者施設の利用者に対する公費医療がこの4月からなくなりますが、県は重度医療費助成の適用が受けられるとの説明をしています。市町村にその確認を求めるとともに、独自で県の制度よりも拡充しているところについては、施設入所者も含める方向での改正を求める必要があります。

精神障害者の通院にかかる自己負担はこれまで5%負担で、ほとんどの市が助成をしてきました。しかし、自立支援法の成立で助成をやめてしまうところがあとをたちません。あくまでも現行の助成を継続するよう働きかけるとともに、一割まで拡充させることも大切です。なお相模原市では激変緩和として育成医療・厚生医療も含めて4月からの1年間は5%を助成することになりました。

 

障害程度区分の認定および支給決定の問題ですが、国は106項目の聞き取り調査をもとにコンピューターで一次判定を行い、審査会での二次判定を経て障害程度区分を認定するとしています。そして、障害程度区分と、介護者の状況やサービス利用意向などを勘案して支給決定をするとしています。しかし、障害程度区分によって国の補助基準が決まり、利用できるサービスが制限されるなど、現行の支援費制度より大きく後退します。

それだけに、私たちの生活実態や要望を聞き取り調査や、審査会に反映させていく取り組み、調査項目とそのマニュアルの改善はもちろん、1次判定の仮通知や審査会での意見陳述を認めさせることなどが重要です。しかし国はそのようなことを全く考えておらず、市町村も、国の定めるところに従うとの回答が多数でした。

いま聞き取り調査の調査員研修が自治体職員を中心に始まっています。しかし町村部は相談支援事業者に委託すると答えています。逗子市では職員が削減される計画があるので委託も考えられると回答しています。問題は障害者の生活実態や要望を含めた調査をどこが責任を持つかです。今までどおりの福祉事務所の役割を存続させて、障害者のことが分かるケースワーカーが聞き取り調査をすることを徹底させていく必要があります。

審査会の設置条令が今度の議会で提案されます。海老名市は「専門家、当事者、医師」がなるとし、小田原市は「3合議体」、茅ヶ崎市は「1合議体あたり6名の2合議体」、大和市は「2合議体」と回答してきましたが、その他はまだ詳細が決まっていません。もしも1合議体あたりの審査件数が多ければ、1ケースあたりの審査時間が短時間となってしまいます。市との懇談では、利用者の見なし人数を聞き、十分な時間をとって審査できるだけの合議体を要求していきましょう。

なお、小田原と足柄下郡で広域連合を組み審査会を設置することになっています。 

審査会のメンバーについても注視していく必要があります。委員の研修も行なわれていますが、小田原では、介護保険の審査会の委員を横滑りさせて研修を受けていると聞いています。

一方、伊勢原では、身体、知的、精神の種別ごとの合議体を設定し、委員には、学識経験者や当事者の関係者を予定しています。障害別に、その障害者の生活を理解する専門家や当事者を委員にさせていくよう働きかけていきましょう。

回答の中には、国の補助単価以上のサービス支給を決定した場合には市の負担になるので、国の基準で対応せざるを得ないとありました。懇談では、現行サービスをいささかも後退させないと約束をさせて、国基準以上の支給を必要とするケースについては、市の責任で対応させることが必要です。

 

次に、地域生活支援事業についてです。これも、まだ国から全体について示されておらず、その動向を見てから対応する回答がほとんどでした。市町村格差を生じさせないためにも、現行制度のまま維持させていきましょう。

とりわけ、利用者負担については実施主体である市町村が決めるとされており、国は「従来から負担を求めていない事業については、無料で実施するのが望ましい」と言っています.市町村からの回答の中に、「みんなで支えあう自立支援法の趣旨に則って適正な利用者負担を検討する」とありましたが、手話通訳派遣事業などは無料を継続させることが大切です。

ただ、移動介護とデイサービスは、4月から9月までは個別給付で応益負担となり10月以降、地域生活支援事業に移行されるわけで、そのまま応益負担となる危険性があります。私たちは、地域生活支援事業に移行されたら応能負担に戻すよう、いまから声を上げていきましょう。

地域作業所が移行する先の一つに、地域活動センターがあり、地域生活支援事業に位置づけられています。12月の主管課長会議で、規模によって3パターンが示されました。だからといって、市単独の助成制度をやめてしまう理由はありません。地域活動センター事業などに移行するか、現行の形式のまま存続するかは、その地域作業所の自主性を尊重することや、いずれかを選択しても、地域作業所の果たして来ている役割をしっかりと受け止め、現行の補助水準を維持し拡充することを働きかけていきましょう。

 

最後に、市町村障害福祉計画に策定に関してです。国は、2月に基本指針を定めると言っています。しかし、基本指針に縛られること無く、具体的な施策とサービス基盤の整備、とりわけ、障害児学校高等部の数年後までの卒業生を見越した計画、重症心身障害児者の問題、制度の狭間におかれている障害者への支援、長時間介護が必要な人への体制などを要求して、市の福祉計画に反映させていく取り組みが重要です。

 

 

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